ギドラの巣「新」映像作品掲示板
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ラジオドラマ版『ゴジラ』等 - エクセルシオール (男性)
2019/05/18 (Sat) 22:22:28
最近、『ゴジラ』のラジオドラマがあったことを知りました。1954年7月から9月までニッポン放送で放送されていた作品で、映画公開(同年11月3日)よりも前になります。ということは少なからぬ人が映画よりも先に「ゴジラ」を知っていたことになります。これは面白い事実です。
このラジオドラマですが、現存しているのは全11話のうち最終回だけだそうです。昔は録音テープも貴重だったのでやむを得ない側面もありますが、残念なことです。幸いにも最終回を聴く機会がありましたが、音楽やゴジラの鳴き声、キャラ描写等が映画とはかなり異なっていました(ゴジラの咆哮は一説にはラジオ局社員の声を加工したものとも言われる)。なお、キャストは映画版と大きく異なりますが、映画で田辺博士を演じた村上冬樹さんがこちらでは山根博士役だったそうです。
物語全体に関してはラジオドラマの脚本を統合したものが小説として出版されており、それで何とか把握できます。香山滋著『怪獣ゴジラ』(岩谷書店、1954年)がそれで、その後復刻もされています(『香山滋全集』第7巻他)。
この物語では尾形の役割が多く、まさに主人公と言えます。山根博士はG作品検討用台本と比べるとずっとまともな人間になっていますが、最後までゴジラ抹殺に反対しています。芹沢博士についても映画よりさらに狷介な感じがする人物になっています。それから驚いたのは新吉が死んでしまうことです(かわいそうすぎる)。
興味深いのは山根博士が考えた対策方法です。それは「ゴジラに餌をやって懐柔し、次の住処を見つけるまで待つ」というものでした。対策本部には取り合ってもらえないのですが、もしかしたら有効な策だったかもしれませんね。
それから、映画と大きく違う点は、尾形が極秘裏にオキシジェンデストロイヤーを使用してゴジラを倒そうとする展開があったことでした。彼はこの方法でゴジラ退治とオキシジェンデストロイヤーの秘密を守ることを両立させようとします。そして、自らの生命を投げうつ覚悟を示す尾形と、彼とともに死のうとする恵美子の決意を見た芹沢博士は、何とか安全にゴジラを倒す方法を考え出すのですが、不運が重なり秘密がばれてしまったことから、映画と同じような展開になっていきます。
なお、この物語ではラストの台詞は映画にやや近いものになっていましたが、台詞を述べるのは尾形であり、内容も「第二のゴジラが現れたならば、我々は命をかけて戦う」というちょっと勇ましいものになっていました。
ラジオドラマ及び『怪獣ゴジラ』は全体としてはG作品検討用台本と映画との中間的なものであったと思います。アナザーストーリーとしてはなかなか面白いものでした。
後、『ゴジラの逆襲』もラジオドラマ版があったそうですが、こちらは現存しているか不明です。
Re: ラジオドラマ版『ゴジラ』等 - 殿様ギドラ (男性) URL
2019/05/20 (Mon) 18:53:39
むむ、ラジオドラマ版「ゴジラ」の現存する最終話、なにかの資料集に収録されていたはずと思いつつ、
聴いたことはなかったはずだなー、なんて思いましたが、
このごろはすっかり記憶が怪しくて(「ラドンの誕生」は読んでいなかったと思いましたが、そのエンディングには覚えがあって、
書棚を漁ってみたら情けないことに「ラドンの誕生」が収録された本をちゃんと持っていたりする)
まさか聴いたことがあったりしないよなー、なんて某所をごそごそしてみたら、あ、聴けるじゃないのと今聴きながら書いてます。
(やっぱり聴いたことはなかったです)
さてと、きっかけをいただいたので、私も岩谷書店版「怪獣ゴジラ」(1983年10月30日大和書房)を読み直してみました。
私からもいくつか気がついた点を・・・。
全体に、ゴジラの存在を原水爆の象徴としてより、大自然の驚異(脅威)として強調しています。
それから山根博士がゴジラへの攻撃に反対する理由として、攻撃することでゴジラの怒りを呼び一層被害を増やすことを挙げています。
映画では光を当ててはいけませんと言っている部分が、「攻撃してはいけません」となっています。
(怪獣映画構成で大事な発想なのですが、ずーっと後年の作品になると映画的賑やかしのためだけに無益な攻撃シーンが頻発することになる)
ラジオドラマ用台本が基になっているためだと思いますが、尾形・恵美子・芹沢の三角関係が非常にわかりやすくセリフで説明されています。
人間心理のリアリズムを考えれば、映画での抑制されたほのめかしのほうがリアルです。とくに芹沢の態度・言葉は映画のほうがずっといい。
私が持っていた「怪獣ゴジラ」には村田武雄さんによる後書きがついていました。
ああ、なんと感慨深いことか。当時、『ゴジラ』公開から29年‘しか’経っていなかったのでした。
村田武雄さんも本多猪四郎監督もご存命だったんでありますね。(裏表紙には本多監督からのメッセージ入り)
村田さんによる後書きで、山根博士の人物造形について香山案に異議申し立てしたのは自分であると書いてありました。
本多監督も同意見だったということかもしれませんが、まずは村田さんが変更を提案したということらしいです。
それから村田武雄監督で製作された立体映画『飛び出した日曜日』についても言及されていて、これも興味深かったです。
(いや、もう、36年前に読んでいるんですが)
割と近年、なにかの資料で東宝の立体映画(トービジョン)は赤青フィルタ式ではなく、偏光グラスを使うものだったと読んで、
昭和20年代にそこまでやったのかと感心しておりました。
村田武雄さんの述懐でもポロライザーという偏光メガネをかけると書いてあって、たしかに偏光式だったのだと確認できました。
赤青フィルタ式だとカラー映画の立体化は出来ませんが、偏光ならカラーでも可能です。
東宝がトービジョンをたった一回の実験(日本初の立体映画という記録が欲しかっただけとな)で捨ててしまったのは実に惜しいことです。
(あれ? ゴジラの話じゃなくなっちゃった)